「英雄を謳うまい」



  妻有、大賑わいの里山、大規模な展示。ある種の美しさを謳い過ぎているのではないか(もちろん尊いには違いない)、と思うこと多々ありつつも、それを口に出したらいけないような、そんな抑圧を感じながら歩き回る。教会と大学を中心に配した地方都市で10年毎に開かれるミュンスター彫刻プロジェクト、そこでの展示の場所に対する寛容さ(あえて雑な言い方をしますが)と比べてしまっているところもあるかもしれない(それも何十年もの時間を経て手にしたものかもしれないけれど)。


  「向き合うこと」に種類がたくさんあってもよいのではないか?近づくことだけが、それを指すわけではなく、きっとその距離の間で考えるべきことがいろいろあるはずだ。一緒に行動したYさんの見せた、方向の定まることのないみんなの気ままな会話を聞きながら「自由だよなぁ」と効率の悪さに対する少し不満げな顔、一方で道に迷いながらのSさんの味わい深い運転、そんなことも重ねながら。


  印象深かったのは、5年振りに目の当たりにしたTさんの「横揺れダンス」、髪も短くリラックス?で例の海岸に滞在するSさんの「笑顔の中指」、そして「虫の毒」…。灯りのない場所で過ごす涼しい夜はやはり楽しかった。ちなみに、戻ってから読んだ『REMIX』誌の特集は「東京ボヘミアン」、とてもよく響く。ふむふむ…。