髪を切り始めたころに、降り始めた雪。お店の中ではジョン・レノンの歌が流れていて、もう何曲も続いている。お店の人と会話をしながらも、古いストーブがいくつも置かれているから、うとうとしてくる。でも、その間もジョンは歌い続けて、アシスタントの男の子は雪の中を車で走るとワープをしているような気になる、と呟いてる。窓の外を見れば、雪は止む気配もなくゆっくりゆっくり降っていて、「Julia」はきっと冬の寒い夜にお母さんやヨーコのことを考えて作った曲なのかな、と考えたりもする。雪のことは歌っていないけれど、とてもよく似合う曲だから。うとうとも深くなり、気が付けば古い旅館のマッチのことや、不意に知った言葉のことを頭の中に浮かべて、その言葉がかつてそこへ渡ったように、いまここへも届いていると実感する。いつの間にかポールの作った曲が流れていることに気が付いて目を開ける。ここ、そこ、いたるところに、というあの曲。考えることは自分ではないところからやってくる、そんなことを思うある冬の夜の話。