НИИЗА




はじめの日、武蔵野線に乗って新座へ。


駅に着くと、男女が車で迎えに。とても小さくて古い車。
緑と青の間にある上品な色の車、薄い扉はロックをしないと走行中に開いてしまう、とのこと。


部屋に入ると、ひとりの男。ルーマニアの音楽が流れる中で、キムチ鍋の用意をしている。
テーブルの上に置かれたビールには、"AWAMUGI!"と印刷されているが、もはやアルファベットに見えない。


食事をしながら、現実的な問題を切実ではあるが現実味のない意見で四人それぞれが曇らせてゆく。
曇りきれば、つかの間の沈黙。すると東欧の音楽が聞こえてくる。


そんなことを際限なく繰り返している。
なんだか奇妙で、いつかのジャームッシュのよう。




あれは新座ではなくНИИЗАで、Мори、МонにКиносита。
僕だって、Фудзимураだったのかも…。






行きの電車で読み終えた『ハンバーガー殺人事件』、その悲しみはこれまで読んだブローティガンの著作とは比較にならないような類のものだった。その悲壮感の前では翻訳の拙さも風に吹かれてしまう。
帰りにはソンタグを。淀みのない痛切な言葉の数々はそのまま鵜呑みにするのではなく、検討されるべきもののはず…。





とても月の美しい年明けでした。